- 第2回:検量線の作成
- 第3回:緩衝液の調製
- 第4, 5回:検量線を用いて「消費したデンプン量」を算出する
- 第6, 7回:検量線を用いて「生じたp-ニトロフェニルリン酸の濃度」を算出する
- 第7回:酵素の特性(酵素の最大反応速度Vmaxと酵素と基質の親和性Km)を調べる
第2回:検量線の作成
検量線
物の量を測定するための「ものさし」に相当するもの。直接測定できない量(例:溶液の中の物質の濃度)を知りたいときに使う。
決定係数(coefficient of determination, r²)
検量線の信頼度を示す数値。検量線では2つの物の間に直線的な関係が成立することを前提としているが、その正確性については式には現れないため、「r²値」を式に添えて書く。
なお、決定係数に似たものとして「相関係数(correlation coefficient, r)」が存在するが、これは、2つの物の間に直線的な関係が成立するかどうかが不明であることを前提とした実験で採用され、r値によって直線的な関係の有無を評価する(+1に近いほど正の直線的関係が成立、-1に近いほど負の直線的関係が成立、0に近いほど直線的関係が無い、と考えることができる)。
検量線の作成:原点を通過させる条件は?
原点を通過させる必要がある場合:理論的に濃度(あるいは物質量)=0のとき測定値=0になる場合
・濃度と吸光度がランベルト・ベールの法則(A = εlc)に従うとき(ごく簡単に言うと、比例関係にあるとき)
・比色定量、酵素反応の生成物定量などで、ブランク補正を正確に行っている場合
・機器や試薬によるバックグラウンドの吸光度が完全に除去されている場合
検量線の式は「Y = aX」となる(切片 = 0)。
原点を通過させてはならない場合:濃度0でも測定値が0でない可能性がある場合
・化学反応の初期値が0でない(例えば、反応生成物がもともと少し含まれている)場合
検量線の式は「Y = aX + b」となる(切片 = b)。
・検出法が比例関係(直線)ではなく、低濃度域で非線形(直線ではなく、例えば曲線)になる場合
第3回:緩衝液の調製
緩衝液
「弱酸+その弱酸の塩」、「弱塩基+その弱塩基の塩」から成り、外部から加えられた「pHが変わるような衝撃」を緩めてくれる溶液が、緩衝液です。
滴定(今回の実験で行うのは、滴定ではないので注意!!)
濃度が未知である溶液を対象とし、その濃度を明らかにするために行われる。そのために、濃度が分かっている溶液(標準溶液)が用いられる。実際には、この標準溶液と濃度が未知である溶液との反応(中和、酸化還元、沈殿形成、色の変化等)を利用し、反応で消費された標準溶液中の物質の量から未知であった濃度を算出する。
生物化学実験Aでは、目的のpHを示す緩衝液を調製することを目的として、濃度が分かっている溶液どうしを混ぜ合わせる。
つまり、滴定でない!!
第4, 5回:検量線を用いて「消費したデンプン量」を算出する
検量線からデンプン量を算出する
第4回で作成した検量線(Y = aX + b)は「吸光度(Y)」=a「デンプン量(X)」+ bである。したがって、実験で得られた吸光度 cを代入して得られる一次方程式「c = aX + b」を解くことによって「デンプン量(X)」を算出することができる。
検量線から算出したデンプン量から「消費したデンプン量」を算出する
第4回と第5回の実験では、反応溶液(恒温槽で反応させた溶液)の一部に対してヨウ素デンプン反応を行っています。したがって、検量線から算出したデンプン量 X gは、「吸光度測定を行った溶液中に残っているデンプン量」であり、「反応溶液中に残っているデンプン量」ではありません(「反応溶液中に残っているデンプンの一部」です)。
「反応溶液中に残っているデンプン量」の計算方法
ヨウ素デンプン反応に用いた反応溶液の量(b mL)を調べ、そのb mL中に残っているデンプン量 X g(検量線から計算)から「反応溶液中に残っているデンプン量」を計算しましょう。
「消費したデンプン量」の計算方法
「反応溶液中に残っているデンプン量」を計算することができれば、
「反応開始前にあったデンプン量」ー「反応溶液中に残っているデンプン量」
の計算で「消費したデンプン量」を求めることができます。
第6, 7回:検量線を用いて「生じたp-ニトロフェニルリン酸の濃度」を算出する
検量線からp-ニトロフェニルリン酸濃度を算出する
第2回で作成した検量線(Y = aX + b)は「吸光度(Y)」=a「p-ニトロフェニルリン酸濃度(X)」+ bである。したがって、実験で得られた吸光度 cを代入して得られる一次方程式「c = aX + b」を解くことによって「p-ニトロフェニルリン酸濃度(X)」を算出することができる。
検量線から算出したp-ニトロフェニルリン酸濃度から「生じたp-ニトロフェニルリン酸の濃度」を算出する
第6回の実験では、反応溶液(恒温槽で反応させた溶液)の一部に対して10%トリクロロ酢酸や1.5 M炭酸ナトリウムを加えています。検量線から算出したp-ニトロフェニルリン酸濃度 X µMは「吸光度を測定した溶液におけるp-ニトロフェニルリン酸濃度」であり、「反応溶液中で生じたp-ニトロフェニルリン酸の濃度」とは異なります(反応溶液から吸光度測定溶液を調製する過程でp-ニトロフェニルリン酸は希釈されています)。
第6, 7回:「より正しい結果」を得るために・「その結果が正しいか」を確かめるために行うこと
研究の中で行う実験では、「より正しい結果」を得るために同じ条件の試験管を複数用意して実験を行うと共に、「その結果が正しいか」を確かめるために同じ実験を複数回行います。
生物化学実験Aでは、「より正しい結果」を得るために複数の班に同じ実験を行ってもらい(=同じ条件の試験管を複数用意して実験を行う)、第6回には「その結果が正しいか」を確かめるために同じ実験を2回行ってもらいました。
平均

平均(平たいらに均ならす)とは、凸凹した形状を水平にするイメージです。凸凹した砂山では、場所によって地面からの高さが異なりますが、平均することによって地面からの高さが、どこでも同じ(平に均された)になります。
標準偏差とエラーバー
実験では、
・ピペットマンで液体を量り取る時の「設定目盛りのズレ」
・ピペットマンの「劣化」(車のタイヤや靴底が磨り減る等の「避けられない劣化」)
・メスピペットで液体を量り取る時の「読み取り値のズレ」
等によって、少なからず「違い」が生じます。
この「違い」は、結果のバラツキ(砂山の凸凹)となって現れますが、平均した結果だけが示されると結果のバラツキが見えなくなってしまいます。この「結果のバラツキ」を可視化できるものが「標準偏差とエラーバー」です。
標準偏差(Standard Deviation)
平均値を算出する時に用いた数値を全て使うことで、算出することができます(Excelの「数式」→「関数の挿入」→「関数名:STDEV」)。

この図の「σ」が標準偏差になり、平均値から前後 σ(± σ)の範囲にデータの約68.3%が存在することになります。
エラーバー
グラフには通常「平均値」をプロットしますが、結果のバラツキを示すために「データの約68.3%が存在する範囲( ± σ = 標準偏差)」をエラーバーとして示します。
Excelにはグラフにエラーバーを付ける機能が標準で用意されていますが、「エラーバーの長さ= σ = 標準偏差」です。グラフにエラーバーを付けた後、正しく操作を行えたかどうかを確認するために、
・平均値のから+側と−側に伸びているエラーバーの長さが等しい
・エラーバーの長さが標準偏差の大きさと対応している(他の平均値から伸びているエラーバーの長さとの関係が標準偏差の大きさと対応している)
かどうかを確認しましょう。
なお、エラーバーは「結果のバラツキを示す指標」ですので、生命科学の研究の中で行われる実験では主にY軸方向に付けることになります。
補足になりますが、± 3σ(データの約99.7%が存在する範囲)を超えた数値については、「何か大きなミス(数値の入力ミス、動物実験であれば異常な固体、等)があった可能性を考えて「外れ値」として結果の解釈から外します。
第7回:酵素の特性(酵素の最大反応速度Vmaxと酵素と基質の親和性Km)を調べる
「試験管に添加した基質の濃度(X)」と「反応速度(Y)」の関係を調べる(グラフにする)ことによって、「酵素の最大反応速度Vmax」と「酵素と基質の親和性Km」を知ることができます。
X軸:反応に用いた試験管の中に存在する基質の濃度を算出する
第7回の実験では濃度が40、32、24、16、8、4、2 mMになるように基質溶液を緩衝液で希釈しています。そして、この後、それぞれの基質溶液を「酵素溶液」および「緩衝液」と混合して反応溶液を完成させています(溶液は希釈される)。この反応溶液における基質濃度が、「試験管に添加した基質の濃度(X)」となる。
Y軸:検量線から反応速度を算出する
第2回で作成した検量線(Y = aX + b)は「吸光度(Y)」=a「p-ニトロフェニルリン酸濃度(X)」+ bである。したがって、実験で得られた吸光度 cを代入して得られる一次方程式「c = aX + b」を解くことによって「p-ニトロフェニルリン酸濃度(X)」を算出することができる。
ただし、第7回の実験では、反応溶液(恒温槽で反応させた溶液)の一部に対して10%トリクロロ酢酸や1.5 M炭酸ナトリウムを加えて吸光度を測定しています。検量線から算出したp-ニトロフェニルリン酸濃度 X µMは「吸光度を測定した溶液におけるp-ニトロフェニルリン酸濃度」であり、「反応溶液中で生じたp-ニトロフェニルリン酸の濃度」とは異なります(反応溶液から吸光度測定溶液を調製する過程でp-ニトロフェニルリン酸は希釈されています)。このことに注意をして「反応溶液中で生じたp-ニトロフェニルリン酸の濃度」を算出することができれば、反応時間から反応速度を計算することができます。
ラインウィーバー・バークの式とヘインズ・ウルフの式の作成
2つの式は共に直線を示します。したがって、「グラフにプロットした点から導くことができる近似式=ラインウィーバー・バークの式あるいはヘインズ・ウルフの式」になります。この近似式は、検量線を作成した時と同じ手順で求めましょう。
※ここで得られる式は近似式ではあるが検量線とは言わない。
酵素の最大反応速度Vmaxと酵素と基質の親和性Kmの算出
近似式をテキストや教科書に掲載されているラインウィーバー・バークの式あるいはヘインズ・ウルフの式と比較し(上下に並べて書くと比較しやすい)、VmaxとKmを算出しましょう。